結晶と医療と宇宙の
コラボレーション

尿路結石

隕石や鉱物研究と同じ着眼で
尿路結石のメカニズムを解明する

結石がなぜできるのかを
解明したい

光学結晶や半導体結晶を研究する森ゆ研に、ある医学者から共同研究の提案があった。「結晶を創れる研究室なら、尿路結石がなぜできるのかわかるのではないか」。森ゆ研は、タンパク質や医薬品化合物の結晶化も手掛けてはいるのだが、尿路結石は人体という複雑系が創りだす、いわば天然の結晶。しかも結晶から遡って育成条件を解明する研究は初めてだ。

尿路結石は
隕石に似ている

しかし、あるメンバー(ガチ!な人に登場する丸山先生)が意外な言葉を口にする。「話を聴けば聴くほど、結石って隕石に似てる」。だったら、隕石から宇宙の歴史を読み解くように、結石から体内環境を読み解けるのではないか。その閃きで、結晶工学と医学と宇宙科学がコラボレーションした、これまでの医学研究にはないアプローチが生まれた。

分野を超えて
地球科学系の研究者が集結

ユニークな研究テーマに関心を寄せ、各分野から集まったメンバーは40名超。隕石から太陽系形成時の宇宙環境を推定しようとする研究者、天然鉱物から生命の起源に迫ろうとする研究者、生物材料の発生を隕石衝突の再現実験から探ろうとする研究者など顔ぶれは多彩で、結晶の研究者も大学の枠を超えて集まった。もちろん、臨床経験が豊富で最初に研究を提案した腎・泌尿器科の医師たちも研究をリードする。

視点の異なるメンバーから
新たな着眼点が生まれる

プロジェクトの名は「METEOR PROJECT(Medical and Engineering Tactics for Elimination of Rocks Project)」。最先端の分析手法を持ったエキスパートに加え、繊細な組織を損なわずに薄片に加工できる技術者も参加。異なる視点と知見を持ったメンバーが忌憚なく議論を重ねることで、いくつもの新たな着眼点が生まれ、観察と分析を重ねながら、体の中で一体何が起こっているのかを紐解いている。

結石は相転移によって
硬く変化することを解明

森ゆ研が持つ知見からわかったこともある。結石には、脆くて壊れやすいタイプと堅くて割れにくいタイプがあり、それぞれ異なる環境下で成長すると考えられていたが、元々は同じ結石であり、相転移という現象によって結晶構造が変化するからであることが判明した。脆い結石は体外から衝撃波で破砕して排出できるため、相転移を促す物質や条件を解明し、それを阻害することができれば、新たな治療法に結びつくかもしれない。

命に触れる現場を
変えることのできる成果を

結石症手術の現場見学も行った。尿路結石はいまや「怖くない病気」「簡単な手術」と言われるが、医師たちが奮闘する壮絶な現場に衝撃を受けた。そこには命に触れるという行為が確かに存在しており、「このままではいけない」「この現場を変える技術を」とメンバーたちは志を新たにした。プロジェクトが本格的に動き出すのはこれから。どのような成果が出てくるのか、楽しみである。