IoTの頭脳となる
AI実現の鍵
CLBO
AIの頭脳となる半導体チップの
製造を可能にする唯一の光学結晶
ソフトウエアだけで
AIは実現しない
IoTによるスマート社会は、AIと5Gによってもたらされる。AIという言葉は一般的に用いられるようになり、AI家電なるものも登場している。しかし、人工知能と言えるような本当のAIはまだどこにもない。いまAIと言われているものはソフトウエアでしかない。本当のAIには、ヒトの脳に迫るような演算処理が可能な半導体チップが必要だ。
立ちはだかる
ゴミ問題
AIのための半導体チップが近い将来、現実のものとなりそうだ。これまでの限界を超える超微細回路を形成できる画期的な露光技術が実用化されたからだ。ただし、同時に従来にはなかった問題が浮上する。シリコン基板上のゴミ問題である。回路の線幅が7nm(1nmは髪の毛の10万分の1に相当)という細さのため、ウイルスよりも小さいゴミであっても露光を阻む大問題になってしまうのだ。
解決できるのは
CLBOだけ
ウイルスよりも小さいゴミをどうやって見つけるのか? 森ゆ研が発見したCLBOという結晶を使えばできるのである。CLBOは、セシウム、リチウム、ホウ素、酸素による化合物の結晶。波長を変換する機能に優れ、世界でもっとも強力な紫外線レーザーを出すことができる光学結晶だ。高出力で短波長だからウイルス以下のゴミも捉えて見逃さない。
専門外の発想が
新発見につながった
実はこのCLBO。半導体の研究ではなく、ちょっと横道にそれてレーザーに関係する酸化物の研究をしているときに偶然発見することができた。専門外だからこその発想が従来にない合成を生んだのだ。半導体製造に詳しい研究者も「とても有望な結晶」と絶賛。特許を使わせてほしいとアメリカの先端企業が大阪に飛んで来るほどの発見だった。
発見しただけでは
使い物にならない
キラリと光る機能を持ったCLBOではあったが、発見の時点ではまだその素質しか見せていなかった。紫外線レーザーは切れ味の鋭いメスのようなもので、光を出すと自らを壊してしまう。現実社会に実装するには、もっと丈夫でレーザーの出力も高めなくては使い物にならない。そのためには新しい結晶育成法を考案しなくてはならなかった。
常識外のアイデアで
実用化の道を開拓
試行錯誤を繰り返して辿り着いたのは、結晶育成中の溶液を撹拌するという正統派の結晶研究者なら思いもつかない常識外れの方法。静かな環境下で育成するという定石に反して、このアイデアが見事に的中。世界を驚かす結果をもたらし、CLBO結晶は、レーザーの分野で日本で初めて発見された有用な新材料となった。発見から社会実装、さらにAIの実現に向け、研究はいまも精力的に続けられている。